はじめに:テニス肘とは?
「肘の外側がズキッと痛む」「マグカップを持つだけで肘が響く」「手首を動かすと肘が重く感じる」
そんな症状を経験したことはありませんか?
これらは、一般的に“テニス肘”と呼ばれる**外側上顆炎(がいそくじょうかえん)**のサインかもしれません。
テニス肘はスポーツ障害のイメージが強いですが、実際にはテニスをしていない人にも多くみられる症状です。
料理・掃除・パソコン作業・育児など、日常的な動作の繰り返しによって肘外側にある**短橈側手根伸筋(ECRB)や総指伸筋(EDC)**といった筋肉の付け根(腱)に過度な負担がかかることで、微細な損傷や変性が起こることが背景にあります。
最近の研究(Brukner & Khan’s Clinical Sports Medicine, 5th Edition)では、炎症ではなく腱の微小断裂やコラーゲン変性が主因とされ、いわゆる「使いすぎ」による腱の“疲労性変化”が中心と考えられています。
症状と特徴
- 肘の外側(骨の出っ張り=上腕骨外側上顆)を押すと痛い
- 物をつかむ、持ち上げる、回す動作で痛みが出る
- 握力の低下、重だるさ、違和感が続く
- 朝や使い始めにこわばりを感じる
痛みが慢性化すると、前腕の筋肉のバランスの崩れや神経の調整機構の乱れを伴い、動作全体に影響が出ることもあります。
なぜテニス肘が起こるのか
〜過労筋とさぼり筋のバランス〜
テニス肘は、「肘の使いすぎ」による単純な筋肉疲労ではありません。
実はその背景に、**過労筋(がんばりすぎ筋)とさぼり筋(働きにくくなっている筋)**のアンバランスが潜んでいます。
■ 過労筋(がんばり筋)
主に前腕伸筋群(特に短橈側手根伸筋)が該当します。
この筋肉は、手首を反らす・物を持つ・つかむなど、ほぼすべての手作業で使われます。
慢性的な負荷により緊張が高まり、筋膜の滑走性が失われると、関節の可動性が低下し痛みを生じやすくなります。
■ さぼり筋
本来、前腕や肘の動きを支える役割を担う筋肉群(例:屈筋群、上腕三頭筋、肩甲骨安定筋など)が十分に働かない状態。
動作時に負担が特定の筋肉へ偏ることで、過労筋が常に緊張を強いられ、悪循環が起こります。
過労筋を緩めてさぼり筋を活性化する理由
筋肉は単独で働くのではなく、関節をまたいで互いに協調しながら動く仕組みになっています。
ある筋が硬くなると、拮抗する筋(反対側で動作を制御する筋)は神経的に抑制されやすくなるという「相反神経抑制」の働きが起こります。
つまり、過労筋が過剰に働くと、さぼり筋は神経レベルで“働きづらくなる”のです。
この状態ではいくらトレーニングをしても、正しく筋肉が使われません。
そこで、まず過労筋をゆるめ、関節の可動域を回復させることが重要です。
関節が動きやすくなれば、神経的な抑制が解除され、さぼり筋が自然に働きやすくなります。
これはリハビリテーション分野でも広く認められているプロセスです。
運動連鎖と姿勢の関わり
肘の動きは手首や肩、さらには体幹までつながる「運動連鎖」の中にあります。
例えば:
- 肩甲骨の可動性が悪い → 前腕伸筋群に負担集中
- 猫背姿勢 → 肩が内巻きになり、肘の位置がずれる
- 体幹の安定不足 → 手先の動作を無理に支える
このように、肘だけをケアしても再発を防ぐことは難しく、姿勢・体幹・肩甲骨の連動を整えることが鍵となります。
テニス肘のセルフケア:エクササイズとストレッチ
ここからは、ななつほし整体院が大切にしている「過労筋をゆるめ、さぼり筋を活性化し、全身の連動を整える」考え方に基づいたセルフケアを紹介します。
いずれも無理のない範囲で行い、痛みが強い場合は控えましょう。
① 前腕伸筋群ストレッチ(過労筋のリリース)
目的:短橈側手根伸筋・総指伸筋の緊張を和らげ、関節可動域を改善。
方法:
- 片腕を前に伸ばし、肘をまっすぐにする。
- 反対の手で指先をつかみ、ゆっくり手首を内側に曲げる。
- 前腕の外側(肘の外側〜手首)が心地よく伸びるところで20〜30秒キープ。
- 2〜3回繰り返す。
ポイント:反動をつけず、筋肉の長さ変化を丁寧に感じること。
② 前腕屈筋群ストレッチ(拮抗筋の柔軟性確保)
目的:相反神経抑制を促し、前腕伸筋群の過緊張を緩めやすくする。
方法:
- 手のひらを下にして腕を伸ばす。
- もう一方の手で手首を反らせる方向にやさしく引く。
- 前腕の内側が伸びる感覚を保ちながら20〜30秒。
このストレッチにより、屈筋群の柔軟性が高まり、肘・手首の動きが滑らかになります。
③ エキセントリック・リストエクステンション(伸筋群の再教育)
目的:腱のリモデリングと筋の耐久性向上(※研究:Tyler et al., 2014)。
方法:
- 椅子に座り、前腕をテーブルに置く。
- 手首を机の端から出し、軽いダンベル(0.5〜1kg)を持つ。
- 手首をゆっくり上げて(伸展)、ゆっくり下ろす時に時間をかける(3〜4秒)。
- 10回×2セット。
ポイント:下げる動作(偏心運動)に重点を置く。
腱の組織再構築に関する臨床報告(Croisier et al., 2007)でも有効性が示唆されています。
④ 肩甲骨内転+下制エクササイズ(姿勢連鎖の再構築)
目的:肩甲骨の安定性を高め、肘への負担を軽減。
方法:
- 立位または座位で背すじを伸ばす。
- 両肩甲骨を軽く内側に寄せ、下方向に引き下げる。
- 5秒キープ × 10回。
関与筋:菱形筋・下部僧帽筋(さぼり筋)。
これらが働くことで、腕の動きが体幹と連動しやすくなります。
⑤ 手首回旋協調運動(神経筋リズムの再調整)
目的:前腕回内・回外筋群の協調を回復し、動作のギクシャク感を改善。
方法:
- 肘を90度に曲げて体の横に置く。
- 手のひらをゆっくり上(回外)→下(回内)へ回す。
- 10往復を2〜3セット。
動作を丁寧に行うことで、筋肉間の相反神経抑制が整い、スムーズな運動連鎖を取り戻します。
⑥ 体幹・骨盤安定エクササイズ(全身連動の再教育)
目的:運動連鎖の起点である体幹を安定させ、肘・手首への代償動作を減らす。
方法:
- 仰向けで膝を立て、片足ずつ上げる(デッドバグ)。
- 骨盤を安定させながらゆっくり動かす。
- 10回×2セット。
効果:体幹と上肢の連動が整うことで、肘の負担が軽減しやすくなります。
ななつほし整体院の考え方とアプローチ
浦和ななつほし整体院では、テニス肘の背景にある筋肉の使い方・神経の協調・姿勢のつながりに注目し、
一人ひとりの体のパターンを丁寧に評価します。
- 過労筋の筋膜リリースで関節可動性を回復
- 神経反射(相反抑制)を活かしたリラクゼーション
- 姿勢・骨盤・肩甲骨の連動性を高める運動療法
- 個々の生活・動作に合わせた再教育プログラム
単に痛みを一時的に軽くするのではなく、**「自分の体を正しく使えるようになること」**を目指しています。
「卒業できる整体」を目指して
ななつほし整体院のモットーは、
「施術者とクライアントが共に関わり、卒業できる整体」。
痛みが軽くなるだけでなく、
「なぜそうなったのか」「どう動けば再発を防げるのか」を理解し、
自分の体を自分で管理できるようになることを大切にしています。
そのため、施術・運動・教育の3本柱でサポートを行っています。
私たちは“治す”のではなく、あなたと一緒に体を整えていく伴走者です。
まとめ
テニス肘(外側上顆炎)は、前腕の筋疲労だけでなく、
姿勢・運動連鎖・神経の協調など、全身のバランスが関わる複合的な問題です。
過労筋を緩め、関節可動域を整え、さぼり筋を活性化させることで、
肘だけでなく、動作全体のスムーズさが戻ってきます。
ななつほし整体院では、その人の体の使い方や背景を丁寧に見つめ、
再発しにくい体の土台づくりをサポートしています。
「もう肘を気にせず、自然に動かしたい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
あなたの体が本来のリズムを取り戻すように、
私たちは寄り添いながらサポートいたします。






