◆ はじめに
「膝が痛い」「階段を下りると膝が重い」「歩くと太ももの前が張る」
こんな膝の不調を感じている方の多くが、実は「股関節の伸展(しんてん)」が出ていません。
股関節の伸展とは、太ももを後ろに引く動きのこと。
歩く・走る・立ち上がる・階段をのぼる——どんな動作にも欠かせない動きです。
ところが、この“股関節を後ろに引く力”が制限されると、膝が代わりに頑張るしかなくなり、
結果的に膝関節に負担が集中して痛みを引き起こすのです。
本記事では、
-
股関節の伸展制限が膝にどう影響するのか
-
どんな筋肉が関係しているのか
-
その改善に必要な考え方
を、一般の方にも分かりやすく解説します。
◆ 股関節の「伸展」とは?
股関節の伸展とは、太ももを後ろに引く動きを指します。
主に働く筋肉は以下の通りです。
-
大殿筋(だいでんきん):お尻の大きな筋肉。骨盤を安定させ、体を後ろに押し出す。
-
ハムストリングス:太ももの裏の筋群。膝を曲げ、股関節を伸ばす補助をする。
この2つの筋肉が協調して働くことで、歩行や走行の際に体を前方へと押し出す“推進力”を生み出します。
しかし、デスクワークや長時間の座位姿勢が多い現代人は、股関節を曲げた姿勢が続くことで、
**腸腰筋(ちょうようきん)や大腿直筋(だいたいちょっきん)**など、股関節を曲げる筋肉が縮こまりやすくなります。
これが「股関節伸展制限」の大きな原因です。
◆ 股関節が伸びないと膝がどうなる?
股関節が後ろに引けないと、体は「他の関節」でその動きを代償しようとします。
その結果、膝関節には次のような悪影響が現れます。
① 膝の過伸展(反張膝)による負担
股関節の伸展が足りないと、歩行時や立位で体をまっすぐに保つために、膝を反らせることでバランスを取ろうとします。
この「反張膝(はんちょうひざ)」姿勢が続くと、
膝の前側(膝蓋腱や関節包)に過剰な張力がかかり、慢性的な痛みにつながります。
② 膝のねじれ(Knee-in)と内側への倒れ込み
股関節が後ろに引けないと、大腿骨(太ももの骨)が内旋し、
膝が内側に倒れ込む「Knee-in(ニーイン)」という動きが起こりやすくなります。
この状態では、
-
膝蓋骨(お皿)が外側に引っ張られ、軌道がずれる
-
膝蓋大腿関節に強いストレスがかかる
といった力学的な問題が起こり、階段の昇降時などに膝前部痛(PFPS)を引き起こします。
③ 太ももの前側の過緊張
股関節が伸びないと、大腿四頭筋(特に大腿直筋)が代わりに頑張ります。
その結果、太ももの前が常に張り、膝蓋骨を上方に引き上げてしまいます。
すると膝関節の中で骨どうしが強く押し合うようになり、
軟骨の摩耗や半月板への負担が増えていきます。
④ 運動連鎖の崩れ(キネマティックチェーンの乱れ)
股関節は、体幹と下肢をつなぐ“動作連鎖の要”です。
その伸展制限は、骨盤・腰・膝・足首にまで影響を及ぼします。
部位 | 代償動作 | 影響 |
---|---|---|
骨盤 | 前傾しすぎる | 反り腰・腰痛 |
膝 | 内旋・過伸展 | 膝の痛み・不安定感 |
足首 | 背屈不足・回内 | 足底筋膜炎・外反母趾 |
背中 | 猫背・肩こり | 姿勢の崩れ・疲労感 |
つまり、股関節が動かない=全身が歪むということです。
◆ 「過労筋」と「さぼり筋」の関係
体の中では、働きすぎて疲弊している筋肉(過労筋)と、うまく働けない筋肉(さぼり筋)が存在します。
このアンバランスが、関節の痛みを生む大きな原因です。
過労筋(働きすぎ)
-
大腿直筋(前もも)
-
腸腰筋(股関節の前)
-
大腿筋膜張筋(太ももの外側)
これらは股関節を曲げる筋肉で、伸展制限の原因となる代表的な「硬い筋肉」です。
さぼり筋(働かない)
-
大殿筋(お尻)
-
ハムストリングス(もも裏)
本来は膝や股関節を安定させる役割を持ちますが、過労筋が優位に働くことで神経的に抑制されます。
この現象を相反神経抑制と呼びます。
結果として、前側の筋肉ばかりが働き、後ろ側が“さぼる”状態になり、
姿勢が前傾して膝への負担が増えるのです。
◆ 股関節の伸展を取り戻すと膝は軽くなる
股関節の伸展が十分に出るようになると、膝関節は自然に安定します。
お尻(大殿筋)がしっかり働くと、太ももの前の筋肉の負担が減り、
膝蓋骨の軌道も整い、痛みが出にくい“自然な運動連鎖”が戻ってきます。
改善の流れ(ななつほし整体院の考え方)
-
股関節の動きの検査
→ 伸展角度や骨盤の傾き、筋肉の張りを評価。 -
過労筋のリリース
→ 腸腰筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋などを丁寧にゆるめ、
股関節が後方へ動けるスペースをつくる。 -
さぼり筋の活性化
→ 大殿筋やハムストリングスを神経的に再教育するアプローチ。
相反神経抑制を解除し、“正しい使い方”を体に思い出させる。 -
動作パターンの再構築
→ スクワット・ランジ・歩行などで、正しい股関節主導の動きを再学習。
このように、膝の痛みを“結果”ではなく“原因”から整えることで、
一時的な軽減ではなく、根本的な改善を目指します。
◆ 改善期間と通院の目安
症状の程度にもよりますが、
-
初期(痛みの強い時期):週1回 × 4〜6回
-
中期(動きが改善してきたら):2〜3週に1回
-
維持期(再発予防):月1回
を目安に施術を行うことで、徐々に動きの変化と痛みの軽減を実感される方が多いです。
また、自宅では「腸腰筋のストレッチ」「ブリッジエクササイズ」などのセルフケアを継続することで、
より早い回復が期待できます。
◆ ななつほし整体院の施術方針
当院では、「膝が痛いから膝だけ施術する」という部分的なアプローチではなく、
股関節・骨盤・膝・足首までの動作連鎖(キネマティックチェーン)を整えることを大切にしています。
痛みは“結果”であり、原因はもっと上流にある——
それが私たちが日々の施術で大切にしている考え方です。
筋肉の「過労」と「さぼり」、
そして神経の「抑制と解放」のバランスを整えることで、
膝にかかる無理な力を自然に減らし、動作そのものを変えていく。
それが、ななつほし整体院の根本改善アプローチです。
◆ ご予約・お問い合わせ
「膝の痛みがなかなか取れない」
「ストレッチしてもすぐ戻る」
「お尻が使えない感覚がある」
そんな方は、ぜひ一度、ななつほし整体院にご相談ください。
症状について詳しくはこちら
関連記事
- 【足首の背屈制限と膝の痛み】── その関係を理解すれば、膝痛の根本改善が見えてくる
- 膝の痛みと運動連鎖
- 膝の痛みの原因:内側、外側、お皿の下、膝裏のそれぞれのアプローチ
- 恥骨筋の働きと膝の痛み
- 膝のねじれ(Knee-in Toe-out)のセルフケア集
- 膝のねじれ(Knee-in Toe-out)と膝の痛み
- 膝蓋骨の働きと膝の痛み
- 膝の痛みとハムストリングの働き
- 膝の痛みと大腿四頭筋の働き
- 膝蓋下脂肪体炎のセルフケア
- 膝蓋下脂肪体炎とは?
- 膝痛の原因と改善
- 膝の運動療法
- 膝の運動療法
- 膝の痛みと姿勢
- 「階段の上り下り」や「動き始め」のひざ痛についての解説
- 階段で起こる膝痛 膝蓋大腿関節へのアプローチについて
- 膝の痛み
- 【ひざ痛】膝が痛くて曲がらない方への整体
- 鵞足炎