2. 小胸筋と上腕二頭筋が四十肩・五十肩にどう関わるか？

筋肉の構造・作用から見た肩への影響

ここでは、まずそれぞれの筋肉（小胸筋・上腕二頭筋）の基本的な作用・位置を整理し、なぜ肩の不調に関わるかを明らかにします。

小胸筋（しょうきょうきん）

• 起始：第3〜5肋骨（場合により第2〜4）

• 停止：肩甲骨の烏口突起（うこうとっき）

• 作用：肩甲骨を「外転（胸から離す）・引き下げ・下方回旋」させる。また肩甲骨が固定された状態では肋骨を引き上げて呼吸補助にも作用します。

• 呼ばれる状態：この筋肉が短縮（縮んで硬くなる）と、肩甲骨が前方に傾き、肩が内巻きになって「巻き肩」や「肩前方突出」の姿勢を招きやすくなります。実際、肩甲骨の運動異常（scapular dyskinesis）には小胸筋短縮が深く関わっており、肩関節疾患との関連性が報告されています。 J-STAGE

上腕二頭筋（じょうわんにとうきん）

• 起始：肩甲骨の ・長頭：肩甲骨上顆（関節内を通る） ・短頭：烏口突起

• 停止：橈骨粗面（とうこつそめん）＋前腕筋膜

• 作用：肘を曲げる、前腕を回す（回外させる）、肩の屈曲補助（特に長頭）

• 特徴：長頭腱は肩関節の中を上腕骨頭に沿って走行し、肩の上方挙上時・外転時・回旋動作時に摩擦・圧迫を受けやすい経路を通ります。

なぜこの両筋が四十肩・五十肩に関わるか？

この二つの筋肉が肩関節の運動・姿勢・筋バランスに及ぼす影響をまとめます。

1. 前胸部筋（小胸筋）と肩甲骨の位置異常
   　小胸筋が縮むと、肩甲骨が前方に出て（外転・前傾）、「肩甲骨が胸郭から浮いた／正しい位置を保てない」状態＝肩甲骨運動障害（scapular dyskinesis）が起きます。 J-STAGE+1
   　このような肩甲骨の位置異常は、肩峰‐上腕骨頭の間の“肩峰下スペース”が狭くなりやすく、肩峰下インピンジメント（上腕骨頭と肩甲骨の衝突）を招く因子となります。 J-STAGE+1
   　腕を挙げる、後ろに回すといった動作でこのスペースが狭くなると、腱板・滑液包・関節包に負荷がかかり、炎症・拘縮を誘発しやすくなります。
   　つまり「小胸筋が硬い」 →「肩甲骨の前傾・巻き肩」→「肩関節のスペース狭少化」→「肩関節周囲炎／四十肩・五十肩」を助長するというメカニズムが考えられます。 J-STAGE

2. 上腕二頭筋の長頭が肩関節内にストレスをかける
   　上腕二頭筋長頭腱炎という診断も、四十肩・五十肩に類似・併存するケースが多いです。肩の前面／上腕前面で「肩を挙げる・物を持ち上げる・荷物を抱える」などの動作を繰り返すと、この筋腱に摩擦・圧迫・牽引ストレスが加わります。
   　また、肩甲骨が前傾・内転していると上腕二頭筋長頭腱の通るルート（上腕骨頭溝）への負荷が増え、摩耗・炎症・可動域制限につながる可能性があります。
   　さらに、肩関節の動きが制限されると（二次的な拘縮）この腱に付着・連結する筋・腱・関節包が「固まったまま」動きを強いられ、痛み・可動域低下を助長します。

3. 「過労筋」・「さぼり筋」のアンバランス
   　肩関節が適切に動くためには、肩甲骨を安定させる“さぼり筋”（例：前鋸筋・下部僧帽筋など）がきちんと機能し、肩の大きな動きを担う“過労筋”（三角筋・上腕二頭筋・小胸筋など）が過剰に働かない状態が望ましいです。
   　しかし、巻き肩・スマホ首・猫背などの姿勢崩れや胸部筋（小胸筋・大胸筋など）の短縮により、肩甲骨の安定筋が働かず、代償的に上腕二頭筋・三角筋などが過剰に働く状況になりがちです。
   　この「さぼり筋の働き低下」＋「過労筋の緊張過剰」が、肩関節周囲炎を慢性化させる大きな要因です。

4. 神経の協調（相反神経抑制）の乱れ
   　本来、筋肉は「ある筋肉が収縮すると、その拮抗筋が弛緩する（相反神経抑制）」という仕組みでバランスを保っています。
   　しかし、小胸筋・上腕二頭筋が常に収縮傾向（硬い／緊張）にあると、この拮抗関係がうまく働かず、肩甲骨周辺・肩関節周囲の筋・靭帯・関節包が“休めない”状態になります。
   　その結果、肩を挙げようとしたり、後ろに回そうとしたりする時に「途中で止まる」「動きがぎこちない」「痛みが出る」という現象が起きやすくなります。

4. セルフケア：小胸筋・上腕二頭筋にアプローチ

ご自宅でできるケア（無理ない範囲で）

以下に、肩関節周囲炎・四十肩・五十肩の根本改善に向けて、小胸筋と上腕二頭筋へのアプローチを含むセルフケアを紹介します。安全に進めるため、痛みが強い時期（夜間痛がある・肩をほとんど動かせない）にはまず病院・専門機関での確認を優先ください。

🔹 小胸筋ストレッチ

目的：肩甲骨を引き下げ・外転・下方回旋させる筋（小胸筋）が縮んでいると肩甲骨が前方突出・巻き肩になりやすい。これを緩め、肩甲骨が正しい位置・動きを取り戻しやすくします。

方法：

1. 壁の角を使うスタイル。 壁に向かって立ち、壁の角に前腕を当てて肘を90°程度曲げ、肩の高さと同じ位置に前腕を置く。

2. 片脚を少し前に出し、前腕を壁につけたまま、体をゆっくりと反対側へ回すようにして胸部が伸びているのを感じる。

3. 20〜30秒キープ × 2〜3回／側。

4. 呼吸は自然に、痛みが強く出ない範囲で実施。無理に腕を挙げたりしない。

このストレッチにより、小胸筋の緊張が緩み、肩甲骨が後方・下方へ戻りやすくなり、肩関節の動きに余裕ができます。実際、肩関節周囲炎患者で小胸筋の過緊張が肩甲骨・肩峰下スペースの狭少を助長するという報告があります。 J-STAGE+1

🔹 上腕二頭筋リリース／ストレッチ

目的：上腕二頭筋長頭腱および上腕前面筋群が肩関節・肩甲骨の動きを妨げている場合、それを緩め・使いやすくすることで肩挙上・回旋の負荷を軽減します。

方法：

1. 椅子に浅く座り、片腕を軽く伸ばして手のひらを上に向けた状態にする。

2. 反対の手で手首をつかみ、ゆっくりと手のひらを下に返しながら、前腕・上腕前面に伸びを感じる位置で20〜30秒キープ。

3. その後、腕を少し外側（肩より少し外側）に広げて、同様にストレッチ。

4. 1セット／側、痛みが出ない範囲で2〜3回。

この動きにより、上腕二頭筋の柔軟性が改善し、肩の前方・上方動作での摩擦・牽引ストレスが軽減されやすくなります。上腕二頭筋長頭腱炎が肩関節周囲炎と関連することも報告されています。

🔹 肩甲骨・肩挙上誘導エクササイズ

目的：肩甲骨をしっかり「動かす」ことで、肩挙上時の上腕骨頭と肩峰・肩甲骨の連動を改善し、肩甲骨を支える筋（前鋸筋・下部僧帽筋）を働かせるきっかけにします。

方法：

1. 壁から少し離れて立ち、壁に向かって両手をつけ、高さは肩の少し下くらい。

2. 手を壁につけたまま肘を伸ばし、体を壁へ近づけるようにして肩甲骨が背中で軽く内側から寄るのを感じる。

3. ゆっくりと元位置へ戻る。これを10回×2セット。

4. 動作中、肩がすくまないように、首〜肩をリラックスさせる。

このような軽い肩甲骨運動を組み込むことで、巻き肩・肩甲骨の固定・肩峰下スペース狭少という肩関節周囲炎の助長因子に対して働きかけることができます。

5. 浦和・ななつほし整体院のアプローチ

私たちが「一緒に改善に取り組む整体」をご提案します

肩関節周囲炎（四十肩・五十肩）でお困りの方に、当院がご提供する施術の流れとポイントをまとめます。

🩺 精密な身体分析

まず、肩だけでなく「姿勢・肩甲骨・胸郭・体幹・骨盤」の動きを丁寧に評価します。

• 猫背・スマホ首・巻き肩などの姿勢のクセ

• 肩甲骨の位置・可動性

• 腕を挙げた時の肩甲骨・上腕骨頭の動き

• 小胸筋・上腕二頭筋の緊張・使い方の癖

これらを確認することで「なぜ肩だけが痛くなったか？」「なぜ動きが戻りにくいか？」という根本原因を浮き彫りにします。

🧘‍♂️ 過労筋のリリース（小胸筋＋上腕二頭筋）

硬くなっている小胸筋・上腕二頭筋を、筋膜リリース・手技・鍼灸などを用いて優しく緩めていきます。
この段階で、肩甲骨の位置が整いやすくなり、肩挙上・回旋の導入がスムーズになります。

💪 さぼり筋の活性化（前鋸筋・下部僧帽筋など）

肩甲骨を安定させる筋肉（耳慣れない名前ですが、前鋸筋・下部僧帽筋など）が十分働くことで、“肩を動かす筋肉”の負担が減ります。エクササイズ・誘導運動・日常動作指導を行い、肩が“自分で支え・動かせる”状態を目指します。

🔄 相反神経抑制の再教育

筋肉の“縮む・休む”の正常な切り替え（相反神経抑制）が機能していない場合、肩の動きがギクシャク・痛みが出やすい状態になります。腕を上げる時・後ろに回す時・荷物を持つ時などの動作を一緒に見直し、滑らかな肩・腕の動きを再学習していきます。

🌐 運動連鎖の再構築

肩は“単体”で動いているようですが、実は体幹・胸郭・肩甲骨・上腕骨・前腕の動きが連携しています。
骨盤の位置・背骨の弯曲・胸郭の動きもチェックし、肩だけに頼らない“全身で動ける体”を目指します。

🏡 日常動作・セルフケア指導

肩の施術効果を持続させ、再発を防ぐために、

• 正しい座り姿勢・立ち姿勢

• スマホ・パソコン操作時の肩甲骨意識

• 家事・育児・仕事で肩を使う時のコツ

• 自宅でできる簡単ストレッチ・エクササイズ（前述の小胸筋・上腕二頭筋アプローチ）

これらを個別に指導し、“通い続ける整体”ではなく、**「卒業できる整体」**を目指します。

6. よくある質問（FAQ）

Q1：四十肩・五十肩は放っておいてもいいの？

A：放置しても自然に改善するケースもありますが、可動域制限が残ったり、肩甲骨・筋肉の動きが硬いままになると慢性化・再発しやすくなります。

Q2：なぜ小胸筋・上腕二頭筋ばかり問題にされるの？

A：これらの筋肉は、姿勢（巻き肩・肩前方位）・腕の動き（挙上・物を持つ）・肩甲骨の安定に直接関わるため、肩の動きのアンバランスを作りやすいからです。実際、肩関節周囲炎患者で小胸筋短縮・上腕二頭筋長頭腱炎が併存している報告があります。

Q3：痛くても運動した方がいいの？

A：痛みが強く、動かせない・夜間痛がある時期には無理は禁物です。ただし、中期〜回復期では「動かすこと」が関節・筋肉・神経の回復を促します。セルフケア・専門的なアプローチを組み合わせることで、安全に動きを改善できます。

Q4：どれくらい通えば良くなりますか？

A：個人差がありますが、初期であれば1～2か月の通院で改善が見えることがあります。重要なのは“肩だけを治す”のではなく“肩の動きを支える全身の仕組みを整える”こと。当院では一緒に改善に取り組む姿勢で、あなたの生活・姿勢・動きを一緒に見直します。

Q5：手術が必要なケースもありますか？

A：肩関節周囲炎の多くは保存療法（ストレッチ・運動・整体・リハビリ）で経過しますが、腱板断裂・滑液包・関節包の重度の変化・可動域が著しく制限された場合には整形外科処置が検討されることもあります。早期に適切なケアを始めることが、手術回避・回復促進に有効です。

7. 当院のモットー：🤝 一緒に改善に取り組む

ななつほし整体院のモットーは、
「患者様と施術者がチームになって改善に取り組む」こと。
施術を“受けるだけ”ではなく、日常のクセ・姿勢・ストレッチ・生活リズムまで一緒に整えていきます。
私たちは「通い続ける整体」ではなく、**「卒業できる整体」**を目指しています。
通い続けるのではなく、自分の体を自分で守れる状態へ導くことがゴールです。

8. 浦和・ななつほし整体院からのメッセージ

肩の痛みで「もうこの肩はダメかもしれない」「腕が上がらなくて仕事がつらい」「夜、肩が痛くて眠れない」と感じている方へ。
でも安心してください。肩は“動くように設計された関節”です。そして、多くの場合、“正しい姿勢・肩甲骨・筋力・動き方”を取り戻すことで、今よりも動きやすく・痛みの少ない肩に変わることが可能です。

私たちは「患者様と施術者がチームになって改善に取り組む」整体院です。一緒に肩の痛み・動かしにくさ・姿勢のクセを見つめ直していきましょう。肩の調子が良くなると、日常の動き・仕事・趣味・睡眠まで変わってきます。

肩の痛み・四十肩・五十肩（肩関節周囲炎）でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
浦和・ななつほし整体院は、あなたの肩と体をトータルに整え、“また腕を上げられる喜び”を一緒に取り戻します。

✅ まとめ

• 四十肩・五十肩は「肩関節だけ」の問題ではなく、姿勢・肩甲骨・筋バランス・動き方（運動連鎖）が深く関わっています。

• 特に、小胸筋の短縮＋上腕二頭筋の過剰使用・緊張が、肩甲骨・肩関節に負担をかける重要なメカニズムです。

• セルフケア（ストレッチ・リリース・肩甲骨運動）と専門的な整体・運動療法の併用が有効です。

• 当院では「一緒に治す整体」をモットーに、あなた自身が肩の動き・姿勢・生活習慣を整え、卒業できる体を目指します。

肩の不調を放置せず、少しずつ動きを整えて、快適な毎日を取り戻しましょう。
浦和 ななつほし整体院が、あなたの肩と全身をしっかりサポートいたします。